1月5日に届いた大学時代のゼミの教授からの年賀状。
そこには「
・・・。昨年は『旧軍用地転用史論(下巻)の補足調査および旅日記『ドナウを越えてバルカンへ』(仮題)の校正に、一年中追われました。いずれも、今年三月には刊行の予定です。
齢八十を越えれば、酔う卯腰痛などで身体が思うように動きません。それでも昨年は、沖縄の伊江島、富士五湖、松代地下濠などを見学してきました。今年の夏には、中国の済南、泰山、曲阜、邯鄲、紹興、寧波などに行きたいと夢みております。・・・」とあった。
毎年、文字だけの白黒の年賀状だ。文章で勝負する経済学者らしいと言える。ゼミが終わると、学生に誘われるのを待って、雀荘に行く教授だった。「単はワシが親の時に限ってリーチが早い」と褒め?られたことがあったのを覚えている。
地域経済学が専門なので、その当時にすでに日本中行っていると仰っていた。「宇和島にはロータリーが二つある」と凄いところまで知っていた。今、宇和島にロータリーがあることを知っている人はどんどん少なくなっているだろう。
そう言えば最近、この杉野圀明先生の本を読んでいないなと思った。「ツタンカーメンが微笑む」「オリンポスの神々が笑う」「イスタンブールはガラタ橋」「シルクロード旅遊(上下)」「ビバ・メヒコ(上下)」。これだけの本は持っているのだが。いずれも紀行文。先生流に言うと旅日記らしい。行先はエジプト、ギリシャ、トルコ、中国西域、メキシコ。
ネットで検索するとまだ読んでいない旅日記がいくつか出て来た。そのうち2冊をネットで注文。いずれも中古本。本体価格と送料がほぼ同額。
今日帰宅するとその2冊の本が届いていた。ペルーの「マチピチュ青嵐」とシベリア・モンゴル・中央アジアの「バイカル号は夢を乗せて」。発刊は2005年と2004年。前者は10年後、後者は23年後。旅を終えてそれだけの年を経ての発行だ。
両書の刊行の辞をまず読んだ。そこには23年の理由もあったが、それは省く。
「マチピチュ青嵐」を読み始めた。心地良い。テンポが良い。
とにかく一文が短い。そして文末は現在形が主で、時々過去形が混ざる。
移動はほぼバス。座るのは運転手の反対側の一番前。勿論、沿道を観察するため。私はそこを
杉野席と呼んで愛用している。こんな文章があった。「
・・・、リマまでの所要時間は二時間五分、チクラヨまでだと僅か四十分で飛ぶことになっている。ただ、目的地へ行くだけなら、フライトでも良いが。庶民の風俗を含めた途中の景観や地方の経済状況を見聞するためには、余程のことがない限り、フライトはしない。ここに地域経済学者の苦しみと楽しさがある。」
ホテルも事前には決めていない。部屋が気に入らなかったら変更を要求する。タクシーの料金も高いと思ったら徹底的に値切る。銀行員とも喧嘩する時もある。
読んでいてワクワクする。
私には真似できない。ただ、旅日記は4冊ほど作った。勿論、杉野先生には及びもしないが。文章は影響を受けていると思う。
暫くは杉野先生とペルーを旅しよう。
杉野先生が行きたいと書いている済南と泰山に行ったことがあるのが密かな自慢だったりして。